
世界的人気を誇るスパイ映画「007」とオメガは、切っても切れない深い関係に結ばれています。主人公ジェームズ・ボンドが着用する腕時計、通称”ボンドウォッチ”として、1995年公開の「007 ゴールデンアイ」以降の作品に搭乗するのがオメガのシーマスターなのです。今回は、そんなボンドウォッチの現行モデル「シーマスター ダイバー300」の特別な2本をご紹介。通常のシーマスターとはひと味違うディテールに迫ります。
007の”助演”を務めてきたオメガのシーマスター
シリーズ25作品目となる最新作「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」が2021年に公開されたことでも大きな話題となり、翌2022年には初作公開から60周年を迎えたスパイ映画007シリーズ。派手なアクションや巧妙なストーリーはもちろんですが、主人公ジェームズ・ボンドが身に着けるものや小道具類、車やバイクなどのマシンなどにも注目が集まるのは毎度恒例となっています。
その中でも注目度の高いアイテムは時計、通称ボンドウォッチです。激しい戦闘を繰り広げるボンドの腕には、その衝撃に耐えうるタフなモデルが巻かれており、劇中では時計の内部に特殊な機能を仕込んでいることもしばしば。ケースが手錠を切るための回転式ノコギリになったり、リュウズから強力なレーザーが放たれたり、内蔵されたコイルから電磁パルスを発生させたりなど…なんともロマンにあふれたアイテムなのです。

長い歴史の中でボンドウォッチとして採用されてきたのは、ロレックスの「サブマリーナ」やブライトリングの「トップタイム」、タグ・ホイヤーの「プロフェッショナル ナイトダイブ」、さらにはセイコーの「液晶テレビウォッチ」など実に多種多様。どれも作品のテーマに合わせて選ばれており、予想だにしない使われ方をするのもファンの注目度が高い理由です。
そして、今回の本題であるオメガの時計が初めてボンドウォッチとして採用されたのは、1995年公開の「007 ゴールデンアイ」。5代目ジェームズ・ボンドを務めた主演のピアース・ブロスナンが着用していたのは「シーマスター プロフェッショナル ダイバー 300M」のクォーツモデルで、その名の通り300mの防水性能を持つダイバーズモデルです。

これまで長く採用されていたロレックス「サブマリーナ」から変更されたのは、この時に衣装デザイナーだったリンディ・ヘミングスによるものだと言われています。ジェームズ・ボンドが英国海軍中佐を務めていたことに由来し、より本格的なプロフェッショナル向けダイバーズウォッチを手掛けていたオメガが適役だったわけです。以降、最新作までの8作品すべてにシーマスター(の特殊モデル)が劇中で登場しています。
「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」で活躍した特別なボンドウォッチ
さて、ここからは”買える”現行モデルのボンドウォッチを見ていきましょう。まずご紹介するのは、2021年に公開されダニエル・クレイグが演じた最後の作品となった「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」で登場した特別モデル「シーマスター ダイバー300M 007エディション」です。

本作は映画が公開される前の2019年末に発表されました。公開が延期されていたためスクリーンで目撃したのは発表後しばらく経ってからとなりましたが、ボンドの腕に巻かれた”ガジェット”としての活躍ぶりは予想を上回る大胆なものでした。裏蓋側に組み込まれたコイルで電子パルスを発生させ、周囲の電子回路をショートさせたのが本作です。
もちろんこのような過激な機能は劇中だけのもの。しかし本作がオメガの007との深い関係を象徴する特別なものとされる理由はその製作プロセスにあります。これまでのボンドウォッチは、既存のモデルを採用していたことに対し、本作は企画・デザインの段階から主演のダニエル・クレイグが製作に大きく関わっているのです。
本作のベースとして選ばれたのはシーマスター ダイバー300M。ここからクレイグ本人の意見を取り入れた結果、カラーリングはキャラクター性に合わせたヴィンテージ調のブラウンに、ケースとブレスレットの素材は激しいアクション時にも腕元を邪魔しない、軽量なグレード2チタン製のものに改められました。

通常のステンレススティールが持つ艶やかさとは全く雰囲気の異なる、マット仕上げのグレード2チタン素材は、本作に求められる”ツール感”を見事に演出しています。ボンドが様々な場所に潜入するスパイである以上、時計が必要以上に目立つ存在であってはなりません。

また全体的なマットな質感は、アルミニウム製のブラウンカラー文字盤やベゼルにも共通しています。ヴィンテージ感を強調したいというクレイグの要望に応えるように、針やインデックスに塗布された夜光塗料の色が日焼けしたようなくすんだカラーリングになっています。これが通常のホワイトだったらこの雰囲気に合わず浮いていたでしょう。もちろん視認性は十分に確保されています。
さらに注目は6時位置の矢印型のマーク。これは「ブロードアロー」と呼ばれ、英国政府や英国軍に関連する道具類に実際に使用されてきたもので、ソリッドタイプの裏蓋にも同様の刻印があしらわれています。本作が特別なモデル、とりわけスパイ専用に作られた軍用時計であることを思い出させてくれるでしょう。

007シリーズ60周年を記念した、ギミック付きの意欲作
続いて2本目にご紹介するのは、映画007のシリーズ60周年を記念してつくられた、2022年発表の最新ボンドウォッチ「シーマスター ダイバー 300M ボンド映画60周年記念モデル」です。これまでのボンドウォッチとは異なり、実際に劇中で登場したわけではありませんが、アニバーサリーイヤーを祝福するにふさわしい特別な1本に仕上がっています。

一見すると、通常のシーマスター ダイバー 300Mと大差ないように感じるかもしれません。しかし細かなディテールに迫ると、本作が持つ特別な意味をご理解いただけるはずです。
まずブルーで統一されたカラーリングは、前述した1995年の「007 ゴールデンアイ」で採用された「シーマスター プロフェッショナル ダイバー 300M」のクォーツモデルから着想を得たもの。マットな質感のベゼルや、波模様のパターンが施された文字盤が現代的にアレンジされています。この深みのあるブルーの文字盤とベゼルは軽量なアルミニウム製であり、シュウ酸アルマイト処理という手法によりアルミ表面の耐食性・耐摩耗性が向上。より実用性に富んだ仕様となっています。

それから、通常は回転ベゼルの基準位置に三角形のマークが入っていますが、本作ではあえてマークを入れずに60周年にちなんだ「60」の文字を入れています。このようなさりげない特別仕様は、激しく主張しないオメガらしいものだと言えるでしょう。
そして本作が特別であるという真骨頂はケースの裏に隠されています。シースルー仕様になった裏蓋の中央にご注目ください。銃口をイメージした螺旋状の模様の中心に、ジェームズ・ボンドのシルエットが浮かび上がり、そのシルエットが動いて映画007のオープニングシーンを再現するアニメーションになっているのです。

これは「モアレ」と呼ばれる視覚効果を利用したもの。モアレとは干渉縞ともいい、規則的な模様が重なり合うことで視覚的に縞模様が生じることを指します。本作の裏蓋表面にプリントされた螺旋状の模様と、その下で秒針と連動して回転する円盤に描かれたシルエットがうまく重なり合うことで、このような巧妙なアニメーションが完成します。
この技術は現在特許出願中とのこと。秒針の軸と繋がったシンプルな構造のため、時計が動いている限りはこのアニメーションを鑑賞することが可能。時計の裏側に隠されているからこそ、本作のオーナーだけが楽しめるシークレットなギミックとして完成されているのです。

さて、2本のボンドウォッチをご紹介しましたが如何でしたでしょうか?
どちらもシーマスター ダイバー300Mをベースとしながら、映画007の世界観をさりげなく取り込んだ、非常に完成度の高いモデルに仕上がっています。”実戦”で使えるスペック、オーナーだけが知る仕掛けなど、007ファンにはたまらない仕様が盛り込まれた2本のボンドウォッチ。気になった方は、まず本作を試着するというミッションを遂行してみてください。