
オメガの代表作「スピードマスター」に並ぶ人気と知名度を誇る「シーマスター」コレクション。その中でも「シーマスター ダイバー300M」は特に高い防水性を持ち、日常に限らず潜水のプロが海中でも使える万能機として位置し、映画007シリーズで主人公のスパイ、ジェームズ・ボンドが着用するなど、男心をくすぐる要素が詰まったモデルです。今回はこのダイバー300Mが誕生から30年以上愛される理由を探ってまいります。
現在のオメガはシーマスターから始まった
現行のオメガのコレクションを見渡すと、時間計測ができるスピードマスターやダイバーズウォッチのシーマスター、ドレッシーなデ・ヴィルなど、ジャンルの異なる複数のコレクションが展開されています。ゆえに幅広い層から支持され、圧倒的な知名度を誇るブランドとしての地位を築き上げました。
オメガの歴史において興味深いのが現在のコレクションの成り立ちです。創業100周年を迎えた1948年に初代「シーマスター」が製作されました。このモデルは一般向けではなく、陸海空とさまざまな場所で戦う軍人のために設計された軍用モデルでした。

大きな転換期を迎えたのは1957年。万能機であった初代シーマスターの性能をそれぞれ異なる部分で進化させた3本のモデルが製作されました。防水性能を高めた「シーマスター300」、時間の計測ができるクロノグラフを搭載した「スピードマスター」、機械式時計の弱点である磁気からの影響を抑えた「レイルマスター」。これらは”マスター3部作”と呼ばれ、今の人気シリーズの基礎を作り上げたといっても過言ではありません。現在のオメガのコレクションは1本のシーマスターから派生して広がったのです。

シーマスターの進化
深い潜水を行うプロフェッショナルダイバーの需要に応えるべく、シーマスターは長い年月をかけ進化を遂げていきました。今回紹介する「シーマスター ダイバー300M」の原型となったのは、1993年に発表された「シーマスター プロフェッショナル300」という、300mまでの防水性能を持った本格派モデルでした。時計ケースの内部に侵入したヘリウムガスを抜くことができる「ヘリウムエスケープバルブ」を備えた特徴的なデザインは、今のダイバー300Mと共通点も多く、外見上大きく変更されていません。
そして、これに付随するストーリーとして欠かせないのが、人気スパイ映画007との深い関係性です。どんなフィールドでも使えるという万能性を備えていたことから、このプロフェッショナル300が主人公ジェームズ・ボンドの愛機として採用されたのです。

通称”ボンドウォッチ”は他ブランドの有名モデルもありましたが、シーマスターが初めて登場したのは1995年に上映された「ゴールデンアイ」で、それ以降は2002年の「ダイ・アナザーデイ」までの計4作品で同じモデルが活躍。この出来事はシーマスターの存在を広く世に知らしめました。現在も007をテーマにした特別仕様のダイバー300が複数展開されています。
ダイバー300シリーズとして確立
「シーマスター ダイバー300M」という現在の名称が確立されたのは2006年のことでした。特に大きな違いはムーブメントです。これまでクォーツモデルも存在しましたが、油切れを起こしにくいうえに高い精度を維持できる画期的なメカニズムである「コーアクシャル脱進機」を採用した自動巻きムーブメントを搭載。その証拠に高精度を保証する「クロノメーター」の文字が文字盤に刻まれました。

2011年にはダイバーズウォッチには欠かせない、逆回転防止ベゼルの表面素材がセラミック製になったことで更に高級感が高まり、現在の姿に一気に近づきました。
そして現行モデルが発表されたのは、プロフェッショナル300の誕生から25周年を迎えた2018年のこと。ケースや文字盤等のデザインや搭載するムーブメントが見直され、全方向においてもフルモデルチェンジを果たしました。
大まかに変更された点は、1mmサイズアップされた42mmのケース、ベゼルと同じセラミックで作られた文字盤、日付表示の位置、マスタークロノメーター認証の新しいムーブメント、それを鑑賞できるシースルーの裏蓋など。最先端の技術を惜しみなく投入し、完成度の高い現代にふさわしいスペックを持つダイバーズウォッチとなりました。
プロフェッショナル300を継ぐ細部の意匠

この現行シーマスター ダイバー300Mを観察すると、1993年のプロフェッショナル300と、大幅に外見が変わったわけではないという事が実感できるでしょう。それは、93年の時点で基本的なデザインは完成されていたと解釈することもできます。波をイメージしたパターンが施されたセラミック製の文字盤は初代プロフェッショナル 300から着想を得て復活させ、前述のヘリウムエスケープバルブの位置にも変更はありません。
実物を着用して進化を感じるのは”質感”と”感触”です。外装においてはセラミックを多用しているた高級感があり、着用した際に艶やかであると感じるでしょう。文字盤にまでセラミックを採用しているブランドはほんのわずかであり、この素材(酸化ジルコニウム=セラミックス)の化学式が中心付近に刻まれている点も見所です。

逆回転防止ベゼルの感触は、ブランドの特性が現れる部分です。このダイバー300の逆回転防止ベゼルは、多くのダイバーズウォッチに見られるギザギザとした細かな刻みがありません。そのためか比較的軽めで滑らかな感触に設定されており、フォルムもすっきりとした印象。均等に角が落とされているためベゼルの主張が抑えられ、上品さも感じられるポイントです。

またモデルによってケースやブレスレットの素材が異なっており、ベーシックなステンレスに加え、軽量なチタン、重厚感あふれるゴールド、傷がつきにくいセラミックと多種多様。2025年7月現在、シーマスター ダイバー300のラインナップは(ベルトの仕様違いとクロノグラフモデルを含めて)計56種類も用意されているため、色や素材の組み合わせで自分好みの1本を見つける楽しさがあるのも魅力です。

実用性に特化したムーブメント
このシーマスター ダイバー 300Mが搭載するのは、マスタークロノメーター認定の自社製自動巻きムーブメント「キャリバー8800」。約55時間のパワーリザーブを持ち、時分秒と日付表示を備えた最も標準的な機械です。オメガが誇る高精度なコーアクシャル脱進機を搭載しているため、分解掃除(オーバーホール)の期間を通常の機械式時計の約2倍に延長でき、長年愛用するうえでのランニングコストを抑えられる点も強みです。

また精度にかかわるパーツには、磁気帯びしないシリコン素材が使われているため、公称する耐磁性は1万5000ガウス。これは、強力な磁界を発生させる医療機器MRIの中に時計を入れても問題なく耐えられるほどの実力です。スマホやパソコンなど、磁石を使用したものにあふれた現代において、もはや耐磁性は必須事項でしょう。

オメガの歴史において非常に重要な役割を持つシーマスター。その中で最もアイコニックで高い完成度を誇るのが、このシーマスター ダイバー300Mシリーズなのです。貴方が国家の極秘任務を遂行するスパイでなくても、日々の生活で頼りになる相棒となってくれるはずです。
オメガ「シーマスター ダイバー300M」
品番 グレー文字盤モデル:210.30.42.20.06.001、ブラック文字盤モデル:210.30.42.20.01.001
ケース:ステンレススティール(直径42mm、厚さ13.56mm)、300m防水
ムーブメント:Cal.8800(機械式自動巻き、パワーリザーブ約55時間)
機能:時・分・秒、日付表示
価格:94万6000円(税込み)、2025年8月現在