
2019年、G-SHOCKのベーシックモデルとして加わった2100シリーズは、特徴的な8角形ベゼルや薄型のケースが話題を呼んで瞬く間に人気を博し、今ではG-SHOCKの新定番として展開されるコレクションです。今回は、そんな2100シリーズの最高峰に位置するMR-Gの上位モデル「MRG-B2100B-1AJR」の魅力を紐解いていきます。
2100シリーズというG-SHOCKの新定番
本題のMR-Gに入る前に、まずG-SHOCKの2100シリーズについて知っておく必要があります。G-SHOCKといえばスクエアもしくはラウンド型で、しっかりと厚みがあり造詣がゴツゴツした印象があるかと思いますが、そんな大柄なG-SHOCKの一般的なイメージを払拭したのがこの新しい2100シリーズです。
2100シリーズが世に出たのは2019年のことでした。まず世間の目を引いたのは、G-SHOCKではこれまでにない8角形ベゼル。時計好きな方ならご存じかと思いますが、有名なスイス製の高級腕時計に似ていることから、”カシオーク”の愛称で呼ばれて広まったのは記憶に新しいでしょう。

アナログ針と液晶ディスプレイを組み合わせた“デジアナ”仕様の比較的シンプルな文字盤デザインや、このデジアナ仕様では歴代最薄のケース、それでいて1万円台前半という手に取りやすい価格設定などが高く評価されました。
サイズも控えめで薄型のケースが実現できたのは、G-SHOCKが長年培ってきた耐衝撃構造を進化させた点に起因します。軽量かつ硬質なカーボン系素材を採用した「カーボンコアガード」と呼ばれる構造を取り入れており、内部のムーブメントをカーボンと樹脂の合成素材で覆い囲むことによって衝撃から守るというものです。加えて針が3本のみという機械としてのシンプルな構成も耐衝撃性の向上に貢献しました。

そしてモデル展開とその種類も非常に豊富であり、耐衝撃性能をさらに進化させたステンレス製のメタルモデルや、レディース向けのひと回り小さなモデルなど、幅広い層に向けて今も展開を拡大させているのです。
MR-G基準を満たす2100シリーズの最進化系とは
さて、このようなストーリーを持つ新しいG-SHOCKの顔を、カシオが持つ最先端の技術の結晶ともいえるMR-Gシリーズに加わる1本としてどのように完成させたのかを探っていきましょう。
はじめにMR-Gとは、1996年からスタートしたG-SHOCKの高級機シリーズです。「フルメタル」というコンセプトを掲げ、ケースを削り出したメタルパーツで装甲し、極めて高い耐衝撃性能と上質な質感を併せ持っています。

今回の「MRG-B2100B-1AJR」を端的にまとめると、ケースとブレスレットを特殊な金属で組み上げて、日本の伝統技術を反映させ芸術性も楽しめる、2100シリーズの最高峰のモデルであるということです。
加工難易度の高い素材を惜しげなく採用
高級機として落とし込むために特に重点が置かれたのは金属製のケースでしょう。この時計を手に取った時、まず外見より軽いと感じられると思いますが、これは「64チタン」という硬質かつ軽量な素材を採用しているのがその理由です。
この64チタンは、純チタンにアルミニウムとバナジウムを混合させたチタン合金。純チタンに比べて硬くて強度が高いことに加え、錆に強いという特性がある反面、硬質がゆえに加工するのが困難な金属なのです。

カシオはこの欠点を精密加工技術で解決しました。本作のケースは実に、27点の64チタン製パーツで構成されています。特徴的な8角形のケースを細分化することで各パーツに上質な仕上げを与え、さらに表面に黒色のDLCコーティングを施すことで外からの傷にも強くしているのです。
この多パーツ構成のケースは「マルチガードストラクチャー」と呼称され、主にケース側面周りのパーツを分けて間に緩衝材を挟むことにより、耐衝撃性能を向上させるというもの。パーツを分けると必然的に製作コストが段違いにかかるので、高級機であるMR-Gならではの試みです。

日本生まれの新素材を採用
さらに注目したいのは本作の顔ともいうべき8角形のベゼル部分。特に傷がつきやすいベゼル部分には、カシオは前述の64チタンでは満足せず、時計では使われることがなかった「コバリオン」という新素材を採用しました。
なんとこの素材は日本生まれの新しい合金で、東北大学金属材料研究所の千葉晶彦教授が開発したもの。彼が「珍しい特性も持つまったく新しい金属」と説明するように、チタンの約4倍の硬度を持ち、プラチナに匹敵する輝きを持たせることに成功しました。

具体的にはコバルトやクロム、モリブデンで構成されており、叩いて伸ばす作業を繰り返す「鍛造」と呼ばれる製法で作られます。耐摩耗性に加え金属アレルギーも抑制できることから医療分野でも注目され、人工関節や歯科矯正ワイヤー等で活用が進められています。
このような優れた特性から、カシオは時計部品としての可能性をいち早く見出し、採用に成功。結果、プラチナのような重厚な輝きを持ちながら、耐摩耗性・耐食性に優れ、傷がつきにくく永く美しさを保ってくれる理想的なベゼルを作り上げたのです。直径は44.4㎜と存在感のあるものになっており、ベゼル面は光沢のある鏡面仕上げでMR-Gならではの重厚感を楽しめます。

日本の伝統技法を活用した文字盤
MR-Gのキービジュアルを見ると武士の鎧や刀など、日本らしさを感じることがあるでしょう。これはMR-Gが日本の伝統技術を継承してゆくという一つのテーマを表しています。本作が反映させたのは組子細工。歴史的な神社仏閣、日本家屋の障子やふすまに使われ、福岡県では「大川組子」が全国的にも有名なので、目にした方も多いのではないでしょうか。

この組子細工の幾何学的なデザインをただ安直に使うのではなく、カシオが注目したのは、組子細工が「美しく光を透過させる」という点です。本作の文字盤に注目すると、立体的な凹凸がある中で細かな穴が開いていることが観察できますが、これは文字盤の下に配されたソーラーモジュールに光を届けるための構造になっているのです。

一般にソーラー時計は、光を透過させるために樹脂製の平面的な文字盤を使うので高級感を出すことが難しかったのですが、カシオが誇る微細加工技術によりこの問題を解決しました。表面に配された太めのインデックスと針により、高い視認性を得ることができます。
シンプル、だけど申し分ない機能性
外見が示す通り、本作は2100シリーズらしく機能的にもシンプルにまとまっています。文字盤上にあるのは4本のアナログ針と日付窓のみで、液晶ディスプレイはありません。これには、G-SHOCKとは差別化を図り、高級機として確立させるというMR-Gとしての意図があったのでしょう。本作が示す情報は時・分・秒と曜日、日付のみですが、普段使いするには申し分ない機能性を備えています。

それからMR-Gに共通している点としてモバイルリンク機能があります。スマートフォンに専用のアプリをインストールすることで、簡単に時刻を設定・修正することができるほか、海外の時刻を表示したり、紛失してしまったスマートフォンから音を鳴らす機能なども活用できます。

G-SHOCKの高級機となると、多機能になるモデルがほとんどです。そんな中、あえて搭載する機能を絞り、普段使いのための”質実剛健”な腕時計としての本質を追い求めた「MRG-B2100Bー1AJR」。2100シリーズで確立させたスタイルを守り、その最高峰に位置するカシオの意欲作に注目してみてはいかがでしょうか。
【スペック】
G-SHOCK MR-G「B2100シリーズ」
品番:MRG-B2100B-1AJR
ケース:チタン×コバリオン(縦49.5mm×横44.4mm、厚さ13.6mm)、20気圧防水
ムーブメント:タフソーラー(クォーツ、フル充電時のパワーリザーブ約5か月、パワーセービング時約18ヶ月)
機能:時・分・秒、日付・曜日表示、Bluetooth接続によるアプリ連携
価格:64万9000円(税込み)、2025年8月現在