
今年2026年、展開から30周年迎えたG-SHOCKの最高峰シリーズであるMR-G。この節目の年を祝福する1本のモデルが発表されました。燦然と輝くダイバーズウォッチ「フロッグマン MRG-BF1000EB-1AJR」につけられたプライスは、なんと税込みで121万円。一体、このモデルの何が凄いのでしょうか?この記事では、撮りおろし写真とともに30年の歴史を飾る記念作の本気度と、その魅力を紐解きます。
30周年を迎えたMR-Gの頂点

本作の紹介の前に、G-SHOCKの最高峰ラインであるMR-Gについて振り返ってみましょう。MR-Gとは「Majesty Reality(=風格ある本物)」の略で、クオリティ・価格共にカシオが手掛ける時計の中でもトップの地位を確立しています。1996年に発表された異例のメタル製G-SHOCK「MRG-100」のデビューから今日まで、コアなファンを獲得しながら成長を続けてきました。
そのコンセプトは、樹脂系の素材で覆われたG-SHOCKを金属素材で作り替え、”フルメタル”の外装で身を包んで耐衝撃性能と高級感を両立させること。カシオが持つ最新技術を積極的に取り入れたり、彫金や鎚起など日本の伝統技法を織り交ぜながら、”最高級G-SHOCK”としての立ち位置を構築。カジュアルなG-SHOCKとは全く異なる世界観を提案し、本物志向の方にこそ手に取っていただきたい、カシオの本気が詰まったコレクションを展開しています。
また本作のベースとして選ばれたフロッグマンは、防水性が魅力の一つであるG-SHOCKに欠かせない存在でもあります。”フロッグマン”の名を冠する時計が発売されたのは1993年のことで、水中で軍事活動を行う工作員を指す言葉が、初めてG-SHOCKにつけられたニックネームにもなりました。性能面では、ISO(国際標準化機構)によって厳格に決められた200m防水という規格をクリアしながらも、G-SHOCKとして相応しい耐衝撃性能を併せ持つことが条件。結果、ほかのどの時計とも似つかない、大型で左右非対称の独特なフォルムが誕生し、今でもG-SHOCKの注目モデルとなっています。

このフロッグマンをMR-Gとして解釈し、初めて完全にフルメタル外装へ進化させたのは、2023年発表の「MRG-BF1000R」で、現在でも生産されている定番モデル。特徴的な左右非対称の立体的なケースを、MR-Gの原則に則って金属、しかも軽量なチタン製の鎧で覆っただけでなく、表示類を液晶ディスプレイからアナログ針へ改めることで、まったく新しい高級感あふれるフロッグマンに仕上がりました。
それからMR-Gフロッグマンは複数のカラバリや限定エディションを展開しています。昨年2025年4月には世界最大のカエルとして知られる「ゴライアスガエル」をモチーフにした新作「MRG-BF1000RG-3AJR」を発表。これまで黒で染めていた外装をチタンそのもののシルバー色で仕上げ、専用器具なしで交換可能なカーキのラバーストラップを採用するなど、シリーズに新しい表情を与えました。こうした流れで満を持して登場したのが、今回の記念モデルになります。

極地での自然現象がモチーフ
それでは「フロッグマン MRG-BF1000EB-1AJR」について詳しく見てまいりましょう。MR-Gフロッグマン全体のテーマとしては”挑戦を恐れない冒険者のための時計”であり、本作はさらにそこから踏み込んだ”極地への冒険”がコンセプトになっています。カシオ公式サイトに掲載された記事を参照すると、開発者の方は「世界の秘境や大自然の探索を嗜好する価値観を持つアクティブな人」へ向けたと説明。どんな環境でも着用できるタフさは折り紙付きです。
本作のテーマは南極周辺の海中で起こる自然現象である「ブライニクル」。別名”死の氷柱”とも呼ばれ、氷点下でも凍らない濃い塩水が、周囲の海水を凍らせながら下降し、氷柱や鍾乳石ような柱状の構造を形成するというもの。1970年に初めて科学的に報告され、2011年にイギリスの公共放送BBCが制作したドキュメンタリー番組「フローズンプラネット」で紹介したことで「ブライニクル」という現象が世界的に認知されるきっかけになったといいます。移動速度の遅いヒトデやウニ、ナマコなどの海底生物たちを凍らせてゆく、美しくも攻撃的な姿に多くの研究者たちを虜にしました。

このブライニクルというテーマが最も反映されているのは、複雑な面が渦を巻くように形成された本作のベゼル部分にあります。眩い光を反射するベゼルは、コバルトクロム合金の一種である「コバリオン®」という素材が採用されています。日本で開発された特殊な合金であるコバリオンは、ステンレス素材を上回る硬度を持ち、プラチナのように白っぽく光を反射するという特性を持ちます。高硬度ゆえ加工が大変であるにもかかわらず、このコバリオン製ベゼルに無数のファセットカットが高級感あふれる光沢と煌めきを生んでいます。
このベゼルを手掛けたのは、ダイヤモンド研磨において数々の功績を残してきた”匠”である小松一仁氏。小松氏は過去に2021年発表のモデル「MRG-B2000BS」で初めてMR-Gとのコラボレーションを果たしました。日本の伝統美である「華婆娑羅(はなばさら)」をテーマに、戦国時代の武将が好んだ力強くも華やかな美学を表現するべく、コバリオン製のベゼルに24面のカットを施しました。

本作では前回の比ではない100以上のカット面を施す必要があり、しかもそれが単調なものではなくカット面が渦状に少しずつずれていくようにしなければなりません。当然ながらすべて手作業で行うため量産することは困難。多く作れても1日に10点未満だったといいます。しかもコバリオンは純チタンの約4倍もの硬度を持つことからも、その高い加工難易度と手間のかかりようはステンレスの比ではなく、800本分製作する大変さは容易に想像がつくでしょう。
細部を見てこそ実感できるカシオの本気
外装への力の入れようはベゼルだけではありません。前述した2023年モデルの「MRG-BF1000R」からケース構造を継承しており、200mの防水性能を持たせるために70以上の外装パーツを高密度で組み合わせて作られています。ただし共通点は構造のみで素材は別物です。前作では深層硬化処理を施した純チタンだったことに対し、今作ではそれよりも高度や耐腐食性に優れた「64チタン」が採用され、しかもその表面にチタンカーバイド(TIC)処理を(一部の黒いボタン類はDLCコーティング)施しことで、前作に勝る硬度と耐摩耗性を実現しました。

10万円台のフルメタルG-SHOCKとの大きな違いは、細分化されたひとつひとつのパーツに対してかかる手間でしょう。MR-Gとして妥協を許さない、ポリッシュあるいはヘアライン仕上げがどのパーツにも丁寧に実施。中でも防水性能に影響しやすいサイドボタン周りの構造が特徴的で、一つのボタンに対して防水パッキンや緩衝材を含む複数のパーツが組み込まれています。加えてリューズとプッシュボタンを包むように保護するガードパーツを一体化することで衝撃から守る、MR-Gシリーズ独自の「クラッドガード構造」も取り入れ、耐衝撃性に対しても一切妥協がありません。

また1時・5時位置に配置されたブルーの美しい「ラボグロウンブルーサファイア」は、これまでのMR-Gのハイエンドモデルのみに採用された意匠を受け継いだもの。ベゼルサイドの太い固定用ネジに重なるようにセッティングされ、輝く貴石が武骨な外見に華を添えています。ブルーサファイアには”持つ者に冷静さをもたらす”という意味合いの石言葉があり、冒険者のための時計であるMR-Gらしい選択です。

それから高性能ダイバーズウォッチとしての機能性も充実しています。本作の顔である文字盤の表面は、サンドブラストのような粒立った仕上がり。G-SHOCKとは異なり表示をアナログ針のみで完結させているため、夜光塗料を塗布した太いインデックスと組み合わせることで、特に暗所での視認性を確保しています。もちろん、G-SHOCK同様にLEDライトを光らせることも可能です。
ダイビング機能は、最大2時間までの潜水時間の計測や、最大24時間の水面での休息時間の表示、30本までのダイビングログの取得などを搭載。潜水時間と水面での休息時間を計測する「ダイブモード」と、ダイビングスポットの潮汐情報と現地の時刻を示す「タイドグラフモード」を切り替えて使えるのも、フロッグマンらしい機能です。

ソーラー充電機能を備えた電波時計のため1秒たりとも遅れ・進みを許さないことはもちろん、Bluetoothを用いたモバイルリンク機能も装備。G-SHOCK専用のアプリと連携し、世界300都市のワールドタイム表示、タイドグラフ(=潮の干満をグラフで示す潮位表)の設定、携帯電話探索機能などを使うことも可能です。

多彩な着用シーンを提供する付属品
本体だけではなく付属するベルト類にも注目です。初めは、汚れや経年変化に強くしなやかなホワイトの「デュラソフトラバー」製のストラップが装着されており、チタン製の本体と相まって軽快な印象をもたらします。ケース裏面のボタンを押すとサイドのピンが抜けるような構造になっており、洗浄時などにも簡単に外すことが可能です。

そして驚くべきことに、付属するのは本作専用のチタンブレスレットです。本体と異なり純チタン製ですが、深層硬化処理により表面の高度が高められているとのこと。これがオプションではなく付属品であることは異例でしょう。バックル部分に長さを延長できるエクステンション構造があるため、すぐに伸ばしてウェットスーツの上から着用することもできます。潜水時などのハードなシーンではチタンブレスレットを装着し、普段使いでは軽快かつ快適なラバーストラップに交換するなど、さまざまな場面での使い分けが想定されたセットになっているのです。

加えて、日本のスーツケースブランド「プロテカ」と共同開発したホワイトのウォッチボックスが付属。前述のチタンブレスレットとベルト交換用工具が収納されています。プロテカが得意とする外からの衝撃を吸収する構造のため、本作を飾っておくだけでなく旅のお供としても持ち歩いて使うことも可能。カシオの本拠地である山形で製造される時計本体だけではなく、付属品まで日本製です。

「ブライニクル」を表現したコバリオン製ベゼルをはじめ、徹底的に上質を追求した外装に、ダイバーズウォッチとしての機能性にも一切の妥協を許さない「フロッグマン MRG-BF1000EB-1AJR」。121万円という衝撃のプライスには、カシオの並々ならぬ技術力と細部に至るまでのこだわり、そしてロマンが詰まっているのです。
本作をお探しの方は、小林時計店オンラインストアの商品ページからお気軽にお問い合わせくださいませ。最後までお読みいただきありがとうございました。