
今回ご紹介するのは、私が日々愛用している一本、カルティエ「サントス デュモン LM ブラックラッカー」(Ref.WSSA0046)です。
「カルティエ」と聞くと、ジュエリーやレディースウォッチなどを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかしながら、タンクやバロンブルーといった腕時計も、それぞれに語り尽くせない物語を持っています。
その中でも私の心を強く捉えて離さないのが、ブラックラッカーで仕立てられたサントス デュモンです。手に入れてから約2年、気づけば毎日のように着用している、まさに偏愛と呼ぶにふさわしい一本になりました。
この記事では、モデルの背景やカルティエというブランドの歩みをふまえながら、日々着用するなかで感じてきた魅力をお伝えしていきます。手巻きの薄型ドレスウォッチを探している方や、次の一本に迷われている方の参考になれば嬉しく思います。
【この記事でわかること】
サントス デュモン LM ブラックラッカーとは?

| 項目 | 内容 |
| アイテム名 | サントス デュモン LM ブラックラッカー |
| 品番(リファレンス) | WSSA0046 |
| ケースサイズ | 43.5mm × 31.4mm/厚み7.3mm |
| 素材 | ステンレス製ケース(ブラックラッカー仕上げ)・ブラックアリゲーターストラップ |
| ムーブメント | 手巻き キャリバー430 MC(パワーリザーブ約38時間) |
| 防水性能 | 日常生活防水(3気圧) |
| 主な特徴 | 深みのあるブラックで統一され、シックで上質な印象 |
カルティエ「サントス デュモン LM ブラックラッカー」(Ref.WSSA0046)は、サントス デュモンの中でも、ステンレススティール製のケースと文字盤にブラックラッカーを纏わせた、ひときわ個性が際立つ一本です。
そもそも、サントスというモデルの源流は1904年にさかのぼります。ルイ・カルティエが、友人であるブラジルの飛行家アルベルト・サントス=デュモンの「飛行中も時刻を確認したい」という願いを受けて製作した、世界で最初期の男性向け腕時計のひとつでした。
サントス デュモンは、その精神を受け継ぎつつ、よりエレガントで薄型の方向性を磨いてきた派生コレクションです。
本作はラージモデル(LM)の名のとおり、43.5mm×31.4mmと存在感のあるサイズ感ながら、ケース厚はわずか7.3mm。手巻きの薄型キャリバー430 MCを搭載し、ベゼルに並ぶ8本のビスや、ブルーのシンセティック・スピネルカボションをセットしたリューズなど、サントスのDNAをしっかりと受け継いでいます。
2022年のWatches&Wondersで発表されたラッカーバリエーションのうち、本作はステンレススティール製ケースに黒のラッカーを組み合わせた通常生産モデルとして位置づけられています。
次の章では、本作を生んだカルティエというメゾンの歩みを振り返ります。
カルティエの歴史
「王の宝石商、宝石商の王」と称されるカルティエは、ジュエリーと時計の両軸でラグジュアリーの基準を更新し続けてきたブランドです。
サントス デュモンの誕生背景を理解するうえでも、その歩みを年表で見ていきましょう。
| 年 | 出来事 |
| 1847年 | ルイ=フランソワ・カルティエがパリで創業。 |
| 1898年 | 創業者の孫ルイ・カルティエがメゾンの経営に加わる。 |
| 1904年 | ルイ・カルティエが友人であるブラジル人飛行家アルベルト・サントス=デュモンのために、最初のウォッチを制作する。 |
| 1909年 | ルイ・カルティエの弟であるピエール・カルティエが、ニューヨーク支店を開設。 |
| 1911年 | サントスが一般向けモデルとして発売。 |
| 1917年 | 戦車のシルエットから着想を得た「タンク」が発売。 |
| 1996年 | 母国であるフランスの名にちなんだ「タンク フランセーズ」が発売。 |
| 2009年 | 薄型手巻き仕様の「サントス デュモン」を復活。 |
| 2020年 | サントス デュモン XLが手巻き機械式に回帰。 |
| 2022年 | サントス デュモン ラッカーモデルをWatches&Wondersで発表。 |
このように、カルティエは時代ごとに新しい挑戦を重ねながらも、創業から続く意匠の核を守り抜いてきました。サントス デュモンというモデル自体も、薄型・手巻き・スクエアフォルムという要素を、時代に合わせて磨き続けてきたコレクションです。
次章からは、本作への偏愛を3つの視点でお伝えしていきます。
スタッフが偏愛する時計「サントス デュモン LM ブラックラッカー」の魅力

サントス デュモン LM ブラックラッカーは、私の中で“無重力時計”などと名付けるほど軽量なのが大きな魅力です。本作に出会ってからというもの、複数本所有していた愛蔵のコレクションに、ほとんど手が伸びなくなってしまったのです。
理由を考えるたびに、本作には「ノンストレスで毎日着けたい」という思いに応えてくれる完成度の高さがあるのだと、改めて気づかされます。
ここからは、私の偏愛を支える3つのポイントをご紹介します。
- 魅力1.漆黒のラッカーが纏う、奥行きのある文字盤と唯一無二のケース
- 魅力2.”無重力時計”と呼びたくなる、薄さと軽さがもたらす着け心地
- 魅力3.手巻きならではの、毎日リューズを巻く”手間”が育む愛着
魅力1.漆黒のラッカーが纏う、奥行きのある文字盤と唯一無二のケース
最初に惚れ込んだのは、なんといってもブラックラッカーで仕立てられたケースと文字盤の表情です。ステンレスの上に黒のラッカーを丁寧に重ねたケースは、光の加減でわずかに艶めき、漆黒の中に静かな奥行きを感じさせてくれます。
文字盤も単色の黒ではありません。半透明なラッカー越しに、繊細なスクエアの装飾パターンが浮かび上がる仕立てになっており、角度を変えて眺めるたびに表情が動き、見れば見るほど発見があります。
ローマ数字のインデックスとソード型の針が浮かぶ漆黒の文字盤、そしてリューズに据えられたブルーのシンセティック・スピネルカボション。カルティエ伝統の美学が凝縮されながらも、過剰さはなくどこか潔い佇まい。
ステンレスの素地をそのまま見せるサントスやサントス デュモンも美しいのですが、ブラックラッカーで全身を統一した本作は、ひと目で「あれだ」とわかる、コレクションの中でも特別な存在感を放っています。
魅力2.”無重力時計”と呼びたくなる、薄さと軽さがもたらす着け心地
私はもともと、ステンレスブレスレットの自動巻きを数本所有していました。しっかりとした重量感には独特の所有満足がありますが、毎日着けるとなると話は別です。
本作を初めて腕に乗せたときの感想は、一言で表せば「驚くほど軽い」でした。ケース厚はわずか7.3mm。クォーツ時計と変わらないほどの薄さに、手巻き機械式が収まっているのは見事という他ありません。レザーストラップとの組み合わせも軽量化に大きく効いています。
腕に巻いた瞬間に存在感がふっと消えていくような感覚は、勝手に「無重力時計」と呼んでしまうほどです。気づけば所有していた他の時計に手が伸びなくなり、本作ばかりを腕に乗せる日々が続いています。
本作は、「重さ=高級感」という固定観念を確実に書き換えてくれる一本です。
魅力3.手巻きならではの、毎日リューズを巻く”手間”が育む愛着

本作を語るうえで外せないのが、自動巻きではなく「手巻き」である点です。手巻きであるがゆえにケースは薄くなり、軽さも実現できます。そのメリットはもちろん大きいのですが、私が本当に魅せられているのは、毎朝リューズを巻くという所作そのものです。
かすかな抵抗を指先で感じながら、ゆっくりとゼンマイを巻きあげていく。たったこれだけのことですが、不思議と一日の始まりに小さな儀式を組み込んだような気持ちになります。
例えるなら、小さな子どものお世話のようなものです。「手間がかかるからこそ可愛い」という感覚に近いかもしれません。手間と愛情はどこかで地続きになっていて、機械式時計、特に手巻きムーブメントを積んだ時計は、ゼンマイを巻きあげるという行為そのものが、所有欲を静かに満たしてくれます。
利便性だけを求めるならクォーツでも自動巻きでも構いませんが、それでもあえて手巻きを選ぶことで生まれる愛着が、本作を毎日選びたくなる理由のひとつなのです。
スタッフ目線で語る「サントス デュモン LM ブラックラッカー」の魅力と実用性

ここからは、ドレスウォッチでありながら毎日使い倒せるサントス デュモン LM ブラックラッカーの「実用性」について、スタッフ目線でお伝えしていきます。
- 魅力4.ドレスとカジュアルを行き来できる、懐の深いデザインバランス
- 魅力5.「薄いのに力強い」を成立させる、ベゼル幅とラグの絶妙な設計
- 魅力6.一年を通して毎日使える信頼感、3気圧防水とレザーストラップの付き合い方
魅力4.ドレスとカジュアルを行き来できる、懐の深いデザインバランス
サントス デュモンと聞くと、フォーマルなドレスウォッチの印象を持たれる方が多いかもしれません。確かにスクエアケースにローマンインデックスという出で立ちはクラシックで、スーツとの相性は文句なしです。
ただし、実際に着けて出かけてみると、Tシャツにジャケットを羽織った日も、デニムにスニーカーの日も不思議なほど違和感がありません。文字盤の漆黒とブラックラッカーのケースが、装いの中にすっと溶け込み、引き締まった一点を作ってくれるのです。
私自身も購入当初は、スーツを着る仕事の日にしか着けないだろうと思っていました。しかし、蓋を開けてみれば、私服にこそ意外なほど合うことに気づき、結果として出番が日に日に増えていきました。当店で本作をお求めいただいたお客様にも、同様のお声を多くいただきます。
仕事の日も休日も、ほぼ毎日この一本ばかりを腕に乗せている、と。「これだけで成立する一本」だからこそ、結果として出番が増えていくのだと確信しています。
本作は日常に寄り添ってくれる、極めて懐の深いドレスウォッチだと感じています。
魅力5.「薄いのに力強い」を成立させる、ベゼル幅とラグの絶妙な設計

薄型のドレスウォッチは、繊細すぎて頼りない印象に傾きがちです。私自身、薄型を試着しては「もう少し主張が欲しい」と感じてきた経験が何度もあります。
その点、本作は見事にバランスを取っています。ケースは7.3mmと薄いのに、幅広いベゼルと太めのラグが「線」ではなく「面」を作り、しっかりとした存在感を腕元に与えてくれるのです。
さらに、ベゼルのビスモチーフがサントスらしい道具感を残しているのも見逃せないポイントです。多くのドレスウォッチが追い求める繊細さとは異なる、独自のキャラクターが立ち上がっています。
薄型でありながらも繊細さに振り切らず、適度な力強さを残すといった“さじ加減”こそが、サントス デュモンというモデルの本質だといえます。
魅力6.一年を通して毎日使える信頼感、3気圧防水とレザーストラップの付き合い方
実用性で最後にお伝えしたいのが、日常使いでの頼もしさです。
防水性能は3気圧。雨の中を歩くシーンを想定したスペックではありませんが、実際に私が約2年間ほぼ毎日本作を腕に乗せて生活してきて、不具合と呼べるトラブルは一度もありません。日常生活での手洗いや汗、突然の小雨程度であれば、過度に身構える必要はないと感じています。
注意したいのは、レザーストラップとの付き合い方です。特に夏場は汗を含みやすいため、外したあとに陰干しでしっかり乾燥させる、ローテーションで使うストラップを増やすといったひと手間でコンディションは大きく変わります。革の表情を育てるという楽しみも生まれ、結果として時計への愛着がさらに深まっていきます。
本作は、ハードな環境を想定したスポーツウォッチではないからこそ、丁寧に付き合うほど応えてくれる一本だと感じています。
まとめ
カルティエ サントス デュモン LM ブラックラッカーは、薄型・手巻き・スクエアの要素を、ブラックラッカーという独自の表情で紡ぎ出した、サントス デュモンの中でも特別な一本です。
漆黒のケースと文字盤がもたらす独自性、毎日リューズを巻く所作が育む愛着、そしてスーツでもカジュアルでも違和感なく腕元に収まる懐の深さ。一見すると静かな佇まいの時計ですが、所有してみると、その完成度の高さに静かに惹き込まれていきます。
実際に当店で本作をお求めいただいたお客様も、多くの方が「これしか着けなくなった」とおっしゃるほどです。私自身もそうですが、いつの間にか一本使いになっている、中毒性すら感じるようなドレスウォッチです。
毎日のように腕に着けたくなる一本を探している方には、ぜひ一度実機を試していただきたいと思います。

| プロフィール:佐々木 秀(ささき みのる) 小学生から大学生まで野球一筋。運送会社に12年間勤務。30代のころ、時計好きの友達がきっかけで時計に興味を持ち、数本のモデルを購入。そして買うだけでは満足できず、その魅力を広めたいと2023年2月に小林時計店に入社。時計業界歴4年目。愛用ブランドはカルティエ、モーリスラクロア、ロレックスなど。 |