
あらゆるフィールドで活躍する万能モデルとして高い人気を誇る、ブライトリングの「クロノマット」コレクション。かつてイタリア空軍のパイロットのために製作されたクロノマットは、回転式のベゼルを備え、クロノグラフモデルをメインとしながら、現在3針やGMTモデルが展開されています。
今回ご紹介するのは、クロノグラフとGMTをベースとしたふたつの日本限定モデル。どちらも天然素材であるマザー・オブ・パールを文字盤に採用しており、クロノマットらしいツール感と天然素材の柔らかさが共存する特別なモデルとなっています。シリーズの歴史に触れながら、いまクロノマットで狙うべき2本の魅力に迫ります。
ブライトリングを”救った”?クロノマットの歴史
”腕に着ける計器”として腕時計を作り続けてきたブライトリング。現在代表的なコレクションと言えば「ナビタイマー」と「クロノマット」が二大巨頭となっていますが、そのシリーズの歴史は1942年に発表された世界初の回転計算尺を備えた時計、初代クロノマットに始まりました。
この画期的な航空計算尺は、10年後の1952年に初代ナビタイマーに受け継がれ、この後クロノマットはナビタイマーとは全く別の系譜をたどることになります。現在のコレクションにつながるクロノマットが誕生した1983年のこと。イタリアの航空アクロバットチームである「フレッチェ・トリコローリ」のために開発された1本のモデルに始まりました。

その特徴は「ライダータブ」と呼ばれるパーツのついた回転ベゼルです。爪状になった4つの突起は、グローブを装着した状態でベゼルを回しやすくすることはもちろん、ガラス風防を保護するという役割も持っていました。加えてこのライダータブはネジを回して取り外すことができ、3時位置(15の数字)と9時位置(45の数字)を入れ替えて装着することで、クロノグラフにカウントダウン機能を持たせていました。

また、他にない力強く個性的な外見を持っていたクロノマットは、機械式時計が逆境の時代にブランドを立て直した存在だったとも言われています。新生クロノマットが誕生した80年代は、まさにクォーツショックの真っ只中。しかし、耐久性なども含めパイロットたちに重宝されるほどの実用的な”強い時計”は、クォーツには実現できないものでした。機械式時計の長所を活かした、ブラントの立役者がこのクロノマットだったのです。

アップデートの先のクラシック回帰
それからクロノマットは外装デザインや搭載するムーブメントなどの改良を行いながら、何世代にもわたって進化を続けました。現行モデルで復活した、筒状のコマが連なった形状の「ルーローブレスレット」は80年代に生まれ、しなやかさと高い強度でクロノマットを特徴づける重要な要素となりました。
クロノマットのアプローチが大きく変わったのは2004年のこと。シリーズ誕生20周年を迎えるこの年に誕生した「クロノマット エボリューション」は、大型のケースとダイバーズウォッチ並みの高い防水性を持ち、単にパイロットのためだけでなく、様々な分野で活躍するプロフェッショナルたちに向けたものでした。この特徴からクロノマットはいつしか”マルチパーパス(=万能)ウォッチ”と呼ばれ、独自の立ち位置で存在感を放つようになりました。

また2009年に発表された「クロノマット44」での大きなトピックは、ブライトリングがおよそ5年の歳月をかけて作り上げた自社製ムーブメント、キャリバーB01が初めて搭載されたことでしょう。それまで汎用機をベースにしていたものから、パワーリザーブ(持続時間)が延長され、カレンダー調整の禁止時間帯がなくなり、そしてクロノメーター認定の高い精度が保証されるようになりました。

時は経ち2020年、現行のクロノマットが誕生しました。ケース直径44mmの「スーパークロノマット」や、42mmの「クロノマット」、GMT機能を備えた「クロノマット GMT」、小ぶりで3針の「クロノマット オートマチック」など、充実のラインナップを誇ります。過去のアーカイブをヒントに、前述の「ライダータブ」や「ルーローブレスレット」といったクラシカルな要素を積極的に取り入れた外観となり、2000年代のモデルからガラリと印象を変えたのです。

パール文字盤に惚れる…日本限定クロノマットの魅力
それでは本題に入りましょう。今回ご紹介するのは2本の限定モデルで、王道クロノグラフの「クロノマット B01 42 ジャパンエディション」と、GMT機能を載せた「クロノマット オートマチック GMT 40 ジャパンエディション」です。どちらも150本のみ生産される限定モデルとなっております。

ブライトリングはアジア、特に日本の市場を非常に重要視しており、国内でのブティック展開を筆頭に、ファン向けイベントの開催や限定モデルの製作など、非常に積極的なアプローチを見せています。世界的に見ても”目が肥えている”と言われる日本の時計愛好家へ向けてブライトリングが贈るのが、これらを一例とする「ジャパンエディション」なのです。このジャパンエディションを求めて来日する海外の方がいることからも、ブライトリングファンにとって特別な存在であるというのが分かるでしょう。

通常モデルとの違いは、やはり文字盤。2本は共通して真珠母貝、通称マザー・オブ・パール(MOP)を採用しており、それぞれ色味の異なる素材が使われています。中央から放射状に光を反射する「サンレイ仕上げ」が施された通常モデルとは異なり、なんとも柔らかな印象を持たせてくれるのがこの2本の特徴です。
クロノグラフの「クロノマット B01 42 」に使われているのは、ホワイトMOPと呼ばれる「白蝶貝」という品種の貝です。表面のほとんどの部分が白く、わずかにうねったように見える表面構造を持っています。そしてスポットライトのような強い光を当てると「構造色」の理論で虹色のような鮮やかな色を反射することがあります。一見ホワイトの単色ですが、周囲の光の環境によって変わるという、実はこう見えて表情豊かな素材なのです。

一方で「クロノマット オートマチック GMT 40」に使われているのは、ブラックMOPの名称で呼ばれる「黒蝶貝」という品種の貝。前述の白蝶貝とは全く異なる見た目をしており、非常に色鮮やかであることが特徴です。表面の透明度が高いことが故に「構造色」の影響が強く、まさしく全面が虹色に見えます。グリーンを主とし、ピンクやイエロー、パープルなどに目まぐるしく変わる、白蝶貝以上に表情豊かな文字盤を持っています。

これらの真珠母貝は天然素材であるため、当然ながらふたつと全く同じものが作れません。このMOP文字盤を作る際はひとつの真珠母貝から文字盤数枚分の材料が採れるのですが、その採る場所によってわずかに色味が異なります。特に彩度の高いブラックMOPはその違いが明確で、個体によって別物のように見えることさえもあります。生産されたそれぞれ150本は、150通りの顔があるということなのです。

そしてMOP文字盤の本当の魅力は写真では伝わりません。単眼のカメラと、人間の二つの目では見え方が全然異なるからです。ぜひ、貴方の目でこの美しい日本限定モデルをご鑑賞ください。