
今やスマートウォッチ市場の世界シェア上位を誇り、数々の高性能なモデルを生み出し続けるガーミン。そんなガーミンの技術力を惜しげなく投入した2大フラッグシップシリーズが「EPIX(エピックス)」と「FENIX(フェニックス)」です。
スポーツからアウトドア、ビジネスまで、ありとあらゆるシーンで活躍する機能をフルに搭載した、まさに死角なしの万能機であると言えます。今回は、ガーミンの2大フラッグシップシリーズそれぞれの違いや、現在発売されている全ての現行モデルをご紹介します。機能性に妥協を許さない、貴方のバディとなる1本を見つけてみましょう。
歴史が証明するガーミンの優れた技術力
2025年現在、スマートウォッチブランドとして知名度を伸ばし続けているガーミン。ライバルが多く競争率の高いスマートウォッチ市場において世界シェア2位となった実績も持っており、国内においてはアップルやファーウェイ、シャオミに次ぐシェア率を誇っています。なぜガーミンが他のブランドの追随を許さないほど急成長を遂げているのか。その理由の核となるのは、35年以上の歴史の中で培われてきた「GPS技術」にあります。

まずガーミンが他のスマートウォッチブランドと決定的に異なる点は、スマートフォンを作っていないこと。一般的なスマートウォッチは、スマートフォンの機能を「拡張させる」という役割があるため、前述したアップルもファーウェイもスマートフォンを手掛けています。
一方でガーミンのスマートウォッチは時計側が機能のメインとなり、スマートフォンはあくまで時計の「補助役」となるのです。もともとガーミンはスマートフォンに頼らず単体で機能する、スポーツ用のウェアラブルデバイスをなどを開発してきたということもその理由でしょう。
歴史を振り返ると、ガーミンは1989年に創業されたメーカーで、航空機や船舶に搭載するGPSナビゲーションシステムを専門に開発することからスタートしました。80年代当時は、衛星から正確な位置情報を取得するGPS技術の黎明期であり、2人はこの分野に高い将来性を感じ、プロフェッショナル向け専門機器の開発に着手。

90年代初頭、航空機に搭載する携帯型GPS端末を発表し、多くのパイロットから支持を得て知名度を獲得しました。それから船舶用、自動車用などと、GPSナビゲーションシステムの守備範囲を広げていきました。
これまでプロ向けの機器で技術を高めてきたガーミンは、2003年に初めて一般向けの製品を開発しました。それが、今のガーミン製スマートウォッチの原型ともなったランニング向け端末「Forerunner(フォアランナー)201」です。世界初となる、GPS機能を搭載した腕時計型ウェアラブルデバイスで、ランニングデータをリアルタイムで記録し手元で確認できるというものでした。この「Forerunner」という名称は、現在もランニング向けシリーズに使用されています。

それから2000年代後期にかけては、サイクルコンピューターやゴルフナビゲーションなど、より一般ユーザーに寄り添う革新的な製品を次々と開発。そのすべてに最大の武器であるGPS機能を搭載していました。
そして今回ご紹介するガーミンのフラッグシップモデルのひとつ「FENIX(フェニックス)」が初めて登場したのは2012年のこと。GPSナビゲーションを搭載したアウトドアユーザー向け製品で、当時から高い耐久性と優れた機能性を兼ね備えていました。当時はまだスマートウォッチの黎明期。初代アップルウォッチが登場したのが2014年だったこともあり、ガーミンが先見の明を持っていち早くスマートウォッチ市場に参入していたかがお分かりいただけるでしょう。

このFENIXはガーミン製スマートウォッチの先駆けとして登場しただけでなく、誕生以来、ガーミンが持つ技術を惜しげなく投入するフラッグシップシリーズとして進化を続け、今に至るのです。ここまで前置きが長くなりましたが、現在のフラッグシップシリーズのご紹介に移ります。
ふたつのフラッグシップ、EPIXとFENIX
ガーミンが展開するスマートウォッチのシリーズには複数種類があり、それぞれ得意とする分野があります。例えば「Forerunner(フォアランナー)」はランニングなどのスポーツ向け、「Venu(ヴェニュー)」はフィットネス・トレーニング等を含むヘルスケア向け、「Instinct(インスティンクト)」は高耐久ロングバッテリーでアウトドア向け、「Approach(アプローチ)」はゴルフ向け、というように登載するメインの機能によってシリーズ・モデルが分けられています。

また、それらの多くは価格帯も比較的手ごろで、シリーズ内の上位機種であっても10万円を超えることはほとんどありません。用途に沿って自身に必要な機能を絞れば、経済的な負担が少ないのもガーミンのスマートウォッチの魅力です。
そんなエントリーモデルが数多くある一方で、高価で高性能なハイエンドモデルも数多く展開されています。スマートウォッチ市場全体を見渡しても、ガーミンほど複数の高級機を手掛けるブランドは少ないでしょう。ガーミンの2大フラッグシップシリーズは、今回ご紹介する「EPIX」と「FENIX」。共通しているのはまさしく、ほぼ”機能全部載せ”であること。

両者の大まかな違いは、ディスプレイの明るさ、ソーラー発電機能の有無、バッテリーライフ、ケースの仕上げなど。現行の「EPIX」より「FENIX」が新しい上位クラスという立ち位置となっており、モデルによって異なる数万円の価格差は外装やハードウェア的な側面が強い印象です。
フラッグシップと呼ぶにふさわしい多機能を可能にしたのは、ガーミンが培ってきた高度なGPSナビゲーション技術と、それに付随する計測技術、またそれらを統合するデータ管理体制に他なりません。スマートウォッチはそもそも小型のデバイスで、サイズや重量など様々な制約がある中で、数えきれないほどの機能を詰め込んだこれらのフラッグシップシリーズは、まさにガーミンの技術の集大成と言えます。
EPIXとFENIXの選び方
EPIXとFENIXを比較検討する場合、両者の機能差を軸にモデル選びするとよいでしょう。FENIXのほうがさらに上位機種のため、EPIXに登載されていない機能を見て、それが果たして自身に必要かどうかで判断します。

FENIXがEPIXに優る点は、大きく分けて4つ。
まずディスプレイの解像度および彩度がわずかに向上していること。両者ともにAMOLED(アモールド)と呼ばれる高精細な有機ELディスプレイを採用しています(後述するFENIX 8 DUAL POWERを除く)が、現行のFENIX 8シリーズはEPIX PROの後に登場したため、さらに技術が向上したということになります。ただし、EPIX PROのディスプレイが高精細で美しいことには変わりありません。
次にFENIX(現行の8シリーズ)に音声コマンド機能が追加されたこと。高性能なデュアルマイクとスピーカーを搭載しており、時計に話しかけて音声操作が可能。スマートフォンと連携することで、電話に出て直接話すこともできます。

続いてダイビング機能と、水中でも操作できるボタンが追加されたこと。水深40mまでのダイビングに対応しており、水中でのアクティビティを計測・記録することが可能になりました。ダイビングコンピューターのように最大深度や潜水時間のログを残し、そのデータを管理できます。
最後に「ダイナミックラウンドトリップ」という機能が追加されたこと。これはランニングやサイクリング等で、指定した距離のコースを自動で作成するというもの。この機能の優れた点は、コースを外れてしまった場合でもカーナビのようにルートを自動で修正してくれるので、もとの正しいコースにすぐに戻ることができます。慣れないエリアでも安心してトレーニングに挑めるのです。
それでは具体的に「EPIX」と「FENIX」の現行モデルを見ていきましょう。具体的な機能やディスプレイの種類、バッテリーライフ、本体サイズなどを考慮しながら、ご自身にあった1本を探してみてください。
EPIX PRO (Gen2) 47mm/51mm

まずはEPIXシリーズの現行モデル、EPIX PROです。こちらは後にご紹介するFENIX 8の前作にあたるモデルで、登場したのは2023年6月であるため、価格もフラッグシップの中では低めに設定されています。
ケース直径が47mmと51mmの2サイズ用意されており、その違いはバッテリーライフです。通常のスマートウォッチとして基本的な機能のみで動作させた場合、47mmモデルが約16日間(ディスプレイ常時表示で6日間)であることに対し、51mmモデルはなんと31日間(ディスプレイ常時表示で11日間)。なんと1カ月以上も充電いらずという異例のスペックを持っています。
時計の外装部分は共通して、軽量で耐久性の高いFRPとチタンで作られています。チタンの表面にはダイヤモンドライクカーボン(DLC)という強固なコーティングが施されており、オールブラックな外見も相まって価格にふさわしい高級感を味わえるでしょう。
FENIX E 47mm

続いて「FENIX E」は、FENIXシリーズの例外的なエントリー機種という立ち位置で、シリーズ内では価格が抑えめとなっています。その理由は、後にご紹介するFENIX 8シリーズから「ダイビング機能」と「音声コマンド機能」が省かれていることや、ケース素材がチタンではなくステンレスである点、バッテリーライフなどの細かな部分で機能差があり、全体的にEPIX PRO 47mmにも近い印象です。
逆に言えばそれらの機能性が必要なければ、本モデルでも必要十分なスペックを持っています。価格を少しでも抑えつつ、FENIXの豊富な機能を使い倒したいという方におすすめの1本です。
FENIX 8 43mm/47mm/51mm SAPPHIRE AMOLED

FENIX 8は、2012年に登場した初代FENIXから代々続く、ガーミンのフラッグシップモデルの正統進化版。言うなれば、フラッグシップ中のフラッグシップです。そのため特に人気も高く、多くの需要に応えるためにケース直径43mm、47mm、51mmという豊富なサイズバリエーションを用意しています。

サイズの違いによるスペック差はバッテリーライフのみ。通常のスマートウォッチモード時での駆動時間は、43mmで約10日間(ディスプレイ常時表示で約4日間)、47mmで約16日間(ディスプレイ常時表示で約7日間)、そして51mmで約29日間(ディスプレイ常時表示で約13日間)となっています。フラッグシップシリーズでは最小サイズとなる43mmモデルの存在も大きく、得にケースサイズが気になるビジネスシーンでの活用例も多くあります。

FENIX 8が登載する機能は、前述したような音声コマンド機能などを含む”すべて”。ガーミンが誇るフラッグシップモデルの代表格として、なにひとつ省かず、最大限の機能が詰め込まれています。機能面に一切妥協したくないという方は、間違いなく本シリーズを選ぶべきでしょう。
FENIX 8 DUAL POWER 47mm/51mm

最後にご紹介するのは、 FENIX 8 DUAL POWERというふたつのモデル。ロングバッテリーに重きを置いており「デュアルパワー」という名称が示すのは、通常の充電に加えてソーラー充電が可能であること。ディスプレイの周囲を囲むようにソーラーパネルが配され、屋外だけでなく室内の明かりでも充電が可能です。

スマートウォッチモード時の駆動時間は、47mmモデルで通常バッテリー約21日+ソーラーバッテリー約7日、51mmモデルでなんと通常バッテリー約30日+ソーラーバッテリー約18日。ソーラー充電のアシストにより、驚くべきバッテリーライフを実現しているのです。
その点において、バッテリー消費の激しいディスプレイ部分に工夫が見られます。これまでの全モデルには明るく高精細なAMOLED(アモールド)ディスプレイが用いられていました。対して本作には、半透過メモリインピクセル(MIP)という、消費電力の低いタイプのディスプレイが採用されています。
通常の液晶ディスプレイと違い、バックパネルを常時明るく光らせる必要がない仕組みであることがその理由です。AMOLEDほど繊細で色鮮やかな表示ができない反面、特に太陽光下など明るい屋外での高い視認性を発揮します。旅行やアウトドアなど、数日間におよび屋外で活動することの多い方におすすめしたいモデルです。

共通する豊富な機能の数々
ここからは、以上の全モデルに共通して登載されている、具体的な機能をご紹介します。
EPIXとFENIXは共通して100種類以上のスポーツ計測・分析に対応していることに加え、複数のセンサー類の活用によりライフログ機能、ビジネスや日常生活で役に立つデイリースマート機能なども備えています。各カテゴリーに分けて、非常に豊富な機能を見ていきましょう。
マルチスポーツ機能の一例(100種類以上の種目に対応)
種目 | 機能の詳細 |
---|---|
ランニング | 目的に沿ったトレーニング内容を提案し、コーチのように運動強度やペース配分などを提案。 |
ゴルフ | 世界およそ4万3000以上のゴルフコースに対応。コースの高低差や風向きを考慮しながら、最適なプレイを指南。 |
バイク | ランニング同様、走ったコースの記録(距離、タイム、スピード等)や、VO2Max(人が運動中に1分間で摂取できる酸素の最大量)の計測が可能。 |
サーフィン | 波の高さや潮流、波に乗った回数、速度などを詳細に記録。 |
スイム | 泳いている時の心拍を記録しながら、プールでのラップ、ストロークを計測・分析。 |
登山 | 活動中に役立つ詳細なマップを表示。高度や上昇量をモニタリングしながら疲れにくい登山をサポート。 |
スキー | 世界およそ2000以上のスキー場に対応。滑走とリフト搭乗を自動で切り替える自動ラン機能を搭載。 |
トレイルラン | 詳細なマップを活用しながら、複雑なコース上の上昇区間の距離・勾配・上昇量を表示。 |
ライフログ機能の一例(身体の情報を記録・分析し、健康体を目指す)
計測項目 | 機能の詳細 |
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ストレスレベル | 計測した心拍数の変動から、どの位のストレスを感じているかをモニタリングし、グラフ化。 |
ステップ | 歩数に加え、階段の上り下りも検知して運動量を記録。目標を設定して達成率を見ることも可能。 |
ボディバッテリー | ゲームのキャラのように、自身のエネルギー量を5~100の数値で可視化。今どれほど元気が残っているかの指標となる。 |
睡眠記録 | 睡眠の質をモニタリング。レム睡眠・ノンレム睡眠なども検知し、グラフ化して評価。 |
心拍数 | 常に心拍数を計測し続け、他のさまざまな記録データに反映。 |
血中酸素トラッキング | 血液中に取り込まれている酸素濃度を計測するセンサーを搭載。フィットネス・トレーニングのパフォーマンス向上を目指せる。 |
デイリースマート機能の一例(仕事や日常生活で役立つ機能)
種類 | 機能の詳細 |
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キャッシュレス決済 | Garmin PayではSuicaに対応。交通系ICカードが使える公共交通機関や店舗で利用可能。 |
ミュージックプレイヤー | 時計本体にスマートフォンから音楽ファイルを転送。Bluetoothでワイヤレスイヤホンに接続し、運動中にも音楽を楽しめる。 |
メッセージ通知 | スマートフォンに届いた通知やメッセージを時計側で確認。 |
天気情報 | 1時間ごとに更新される最新の天気情報を表示。 |
スケジュール表示 | スマートフォンのカレンダーアプリと同期し、スケジュールを手元で表示。 |
ガーミンの魅力は、ただ計測後に結果を表示して終わりではなく、その現状からパフォーマンスを向上させるにはどうすればよいのかを提案する、コーチング機能があることでしょう。日常生活では、体の情報をモニタリングしてコンディションを整えるように促し、運動時には自身にあったトレーニング内容を指南します。

ガーミンが誇る豊富な機能をフルに登載したフラッグシップシリーズ、EPIXとFENIX。トレーニングのコーチとして、ときには冒険の相棒として、ときにはビジネスのパートナーとして、貴方の人生をアシストする強力なサポーターとなるはずです。