グランドセイコーの”エレガンス”を体現するGMTモデル「SBGM221」が持つ普遍性

グランドセイコーのエレガンスコレクションに属する「SBGM221」は、第二時間帯を示してくれるGMT機能を持った機械式自動巻きモデルです。本作で見るべきポイントは、グランドセイコーが大切にする”エレガンス”というキーワードを見事に体現している点。そのシンプルかつクラシックな外見から、定番モデルとしてGSファンに愛され続ける逸品です。今回はそんなSBGM221の魅力を探ってまいります。

目次

グランドセイコーが提唱する「エレガンス」とは?

グランドセイコーの腕時計は、コレクションを問わず総じてブランド独自のデザイン文法「グランドセイコースタイル」に則ってデザインされています。それはかつて、セイコーの前身である「服部時計店」に務めていたチーフデザイナーによって確立させたものです。

彼は「グランドセイコーが、腕時計としての普遍的な価値を作り出すために必要なのは、燦然とした輝きである」という言葉を残しました。日本人として、日本が誇る時計を作り出すという信念のもと、美しさと使いやすさを両立させた作品たちを生み出してきたのです。

グランドセイコーのデザイン文法は、1967年に製造された「44GS」が基礎となっています。美しく磨かれたケース、視認性の高い文字盤などのディティールは、現代のグランドセイコーに通じるものがあります。

現在のグランドセイコーのラインナップは、エボリューション9、ヘリテージ、スポーツなど、複数のコレクションに分かれています。原点となるデザイン文法は共通していながらも、その文法の解釈や重要視する点によって異なっており、細かな点を注視していくとその違いを楽しむ事ができます。

今回ご紹介する「SBGM221」が位置するのは「エレガンスコレクション」です。グランドセイコーは、優れた実用性を備えながら、人生の中の特別なシーンでの装いのアクセントとなり、美しさを演出するモデル群であると説明しています。

ここから見えてくるのは”普遍性”というテーマ。グランドセイコーというブランドが誕生したのは1960年ですが、そのファーストモデルの外見を含め基本的な要素は大きく変わっていません。総じてシンプルであり、しかしそのシンプルな中にグランドセイコーの美意識が詰まっているという、なんとも奥深い世界観なのです。

まるでヴィンテージウォッチのような造詣

それでは「SBGM221」を実際に見ていきましょう。本作でまず目を惹かれるのはアイボリーカラーの文字盤です。淡い色合いは文字盤が日焼けしたヴィンテージウォッチを想起させ、日本人の肌の色にも非常に相性が良いのです。一般的なホワイト文字盤と比較すると光の反射が抑えられるため、主張が控えめになり、腕元を上品に飾ってくれます。

艶を出したアイボリーカラー文字盤は、時計全体に柔らかな印象をもたらしています。針やインデックス、ケースを含めて高水準のポリッシュ仕上げのため、ヴィンテージのようなデザインでありながらも、現代の時計としてしっかり作られていることが分かります。

それから優れた視認性も見るべきポイントです。前述したグランドセイコー独自のデザイン文法に則り、特に視認性という部分においても細かな配慮がなされています。しっかりとした厚みのある針とバーインデックスは、文字盤との高いコントラストを与え、明るすぎる場所もしくは暗い場所であったとしても即時に時刻を読み取ることができます。

そしてグランドセイコーにおいて特に針の仕上げには定評があります。時計業界では、いい時計を見分けるには針を見ろ、と言われることもありますが、本作こそ針は見るべきポイントの一つです。

先端が鋭利な形状の「ドーフィン針」は、本作の顔にシャープな印象を与えてくれます。部品の角を斜めに落として鏡面に磨くことを「面取り」と呼ぶのですが、この面取りが文字盤上の針とインデックスすべてに施されています。このような仕上げにより、本作を斜めから見た際に、面取りされた部分が煌びやかに輝くと同時に、優れた視認性を実感することができるのです。

個性を与えるGMT針

「SBGM221」を最も特徴づけるのは、やはり青色のGMT針でしょう。一周1日(24時間)で動作するGMT針は第二時間帯を示し、文字盤の内周に配された小さな目盛りとアラビア数字から読み取ることができます。

ロレックスの人気スポーツモデル「GMTマスター」に搭載されていることで広く知られる機能ですが、本作ではエレガンスというテーマに沿ってデザインされ、あくまでシンプルに落とし込まれています。

本作に個性を与えているGMT針は、文字盤を見る角度によって鮮やかなブルーに輝いて見えます。全体的に磨かれた部分が多いため、周囲の環境によって大きく表情を変えるのが特徴です。

本作のGMT針は光を当てるとブルーに輝きますが、これは塗装ではなく「青焼き」によるものです。青焼きは時計製造における伝統技法の一つ。スチールや鉄製の部品を加熱し、表面に錆を防止するための酸化被膜を施すのですが、その酸化被膜が青色になることからそう呼ばれています。

酸化被膜の色は加熱時間のわずかな違いで変わってしまうため、品質が安定せず大量生産ができません。今もグランドセイコーの職人が、1本づつ手作業で焼き入れ作業を行っているのです。

着用しやすいクラシカルなケース

時計の顔は文字盤ですが、そんな文字盤の魅力を引き立てるのがケースです。このケースにも前述したグランドセイコーのデザイン文法が詰まっており、ヴィンテージウォッチを想起させる造形が特徴です。文字盤を覆う風防は丸みを帯びたボックス型になっており、これが全体的に曲面を多用したケースと見事にマッチしています。

本作のケースと風防は、この写真のようにほとんどが曲面で構成されています。今から50年以上前に作られたヴィンテージウォッチの風防は、プラスチック製でドーム型のものが使用されていました。本作ではその風合いも出しつつ、現代らしいサファイアクリスタル製となっています。

またこのケースの直径は39.5mm、厚さは13.7mmです。メンズウォッチとしては大きすぎないサイズ感であり、比較的手首が細い日本人にこそ着用しやすいものになっています。

ストラップが付く2本のラグが手首に沿って曲がっているので、時計を横から見た時のフォルムも美しく、自動巻きモデル特有の厚みを感じさせない工夫がなされています。グランドセイコーが誇る研磨技術「ザラツ研磨」により、歪みのない美しい鏡面が得られているのも特徴です。

ザラツ研磨によって磨かれたケースは、曲面であっても違和感のある面の歪みが見られません。ケースの鏡面に小さな文字や絵柄を映すと、歪みがないことを確認できます。

加えて本作に付属するのは、艶のあるブラウンカラーのクロコダイルストラップです。腕時計のストラップは、車で例えるとタイヤにあたる部分であり、着け心地や時計全体の印象を決定づける重要な部分です。ブラウンのクロコダイルは淡いアイボリー文字盤との相性が良く、ヴィンテージウォッチらしい温かみのある雰囲気を漂わせます。

また、別売りではありますが他のカラーの純正ストラップを合わせると、本作が持つ違った表情を引き出ることができるでしょう。

ドレッシーな印象を与えるクロコダイルのストラップ。一般的に革ベルトは消耗品といわれていますが、きちんと手入れを行えば何年も愛用することができるのです。

高い信頼性を持つ「9S」系ムーブメントを搭載

「SBGM221」が搭載するのはキャリバー9S66。電池式ではなくゼンマイを動力源とした自動巻きムーブメントです。グランドセイコーが長きにわたって採用してきた自社製ムーブメントである9S系の進化型で、高い精度(日差+5秒~-3秒)と約72時間(3日間)のパワーリザーブを保持している点が特徴です。標準的な機械式時計はおよそ2日間で止まってしまうため、1日分長いことで利便性が格段に向上しています。

機械式時計の魅力である”裏スケ”仕様。自動巻きローターに刻まれたグランドセイコーの文字が誇らしく輝きます。

リュウズを1段引くことで時針のみの操作ができ、ホームタイムの修正を行います。この際、秒針をストップさせることなく調整できるのも嬉しい点です。本作の裏蓋はシースルーバックになっているので、このムーブメントを観察することができます。美しい仕上げが施された精緻なパーツがかみ合って動き続ける様子は、まさに機械式時計ならではのロマンを体現していると言えます。

腕に載せると本作の上品さが際立ちます。柔らかなアイボリー文字盤は、フォーマルでもカジュアルでも合わせやすいカラーリングです。

グランドセイコーのデザイン文法に基づいた”エレガンス”を体現する「SBGM221」。クラシックな造詣を持つシンプルなGMTモデルは、その普遍性から定番モデルとして愛され続けるでしょう。一度本作を腕に載せて、グランドセイコーならではの奥深さを感じてみてはいかがでしょうか。

【スペック】

グランドセイコー「エレガンスコレクション GMTモデル」

品番:SBGM221

ケース:ステンレススティール(直径39.5mm、厚さ13.1mm)、日常生活用防水

ムーブメント:Cal.9S66(機械式自動巻き、パワーリザーブ約72時間)

機能:時・分・秒、日付、GMT表示

価格:67万1000円(税込み)、2025年8月現在

この記事の監修

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